このたび、令和8年5月1日付で弘前大学大学院医学研究科消化器外科学講座の教授を拝命いたしました。私たちの講座は、胃や食道の疾患を扱う上部消化管外科、結腸や直腸の疾患を扱う下部消化管外科、肝臓、胆管、膵臓の疾患を扱う肝胆膵・移植外科、乳腺や甲状腺の疾患を扱う乳腺甲状腺外科、そして小児の外科疾患を扱う小児外科の5つの領域を担当する外科学講座です。近年の医学の著しい進歩に伴い、外科学は今後さらに専門分化していくことが予想されます。しかし私たちは、この5つの領域における高度な専門性と技術をさらに発展させるとともに、幅広い領域を横断的に診ることのできる総合的な診療力を高めることも重要であると考えております。そして、「患者さんが安心して受けられる安全な外科医療を提供する」ことを基本理念として、今後も尽力してまいります。
私は1998年に弘前大学医学部を卒業し、当時の弘前大学第二外科、佐々木睦男教授に師事して消化器外科医としての道を歩み始めました。その後、さまざまな病院で多くの先輩外科医から外科学を学ぶ機会に恵まれたことは、現在に至るまで私の大切な財産となっております。また、弘前大学大学院に進学し、当時の第一生化学講座、遠藤正彦教授のもとで、消化器癌に関わる糖鎖について研究いたしました。臨床から一度離れて生化学の研究に没頭し、2002年に医学博士号を取得いたしました。この研究生活を通じて、「医師は科学者であるべき」という考えを持つようになり、現在も医師として、そして研究者として大切にしている理念の一つとなっています。
2008年からは、当講座の教授に就任された袴田健一先生のもとで、主として肝胆膵外科を担当いたしました。肝胆膵外科では、膵癌に代表される難治癌を扱います。こうした疾患に対する手術は長時間に及ぶことも多く、患者さんにとって大きな身体的負担を伴います。その負担をいかに軽減するかは、肝胆膵外科における重要なテーマの一つでした。2010年頃から肝胆膵外科領域にも手術侵襲を減らす腹腔鏡手術が導入され、その後、さらに侵襲を減らす可能性のあるロボット手術へと発展してきました。日本で肝胆膵領域にロボット手術が本格的に導入される以前から、弘前大学ではロボット手術を臨床研究として立ち上げ、その発展に取り組んできました。そして、2020年のロボット膵手術の保険収載にも大きく関わることができました。今後も、「患者さんの手術による負担をいかに減らすか」という変わらぬテーマを追求し、さらに発展させていきたいと考えております。